とまと愛ヲ語ラウ。



 幼い頃、田舎と呼べるほどの田舎はなかったけれど、幼稚園や小学校の夏休みには、必ず祖母の家に泊まりに行った。祖母はトマトとひやむぎが大好きで、お昼は必ずひやむぎとトマトが食卓に並んだ。
 朝、採りたてのトマトを八百屋に買いに行く。昔のトマトは酸っぱくて、祖母は時々砂糖をかけて食べたりもした。
 ところで、父は中学校の理科の教師をしている。だから、私がまだ幼稚園の頃から我が家では「塩をとって」というところを「塩化ナトリウムとって」というのが日常だった。「塩化ナトリウム」の分子式が「NaCl(エヌエーシーエル)」だということも、5歳にしてマスターしていた。
 当時、もっとも我が家で頻繁に飛び交っていた分子名は「グルタミン酸ソーダ」。「味の素」のことである。「グルタミン酸」は食物に含まれる、うま味成分。太陽をいっぱい浴びて育ったトマトには、このグルタミン酸がたっぷりと含まれている。新鮮なトマトにかじりつけば、ジュワーッとお日さまの味が口いっぱい広がるけれど、グルタミン酸は少し加熱すると、いっそううま味が増す。グルタミン酸を引き立たせる、目からウロコのトマト料理3品を紹介しよう。


 「トマトのみそ汁」
 えーっ! ウッソーという声が聞こえてきそう。確かに私も最初にこの料理に見つけたときは、「一体、どんなふうに料理されてくるの?」と思ったもんです。
 作り方はいたって簡単。湯むきして皮とタネをのぞいたトマトをサクサクサクッと細かく刻み、だしの効いたみそ汁を注ぐだけ。さっぱりとしたトマトの酸味が熱を加えることでいっそう柔らかくなり、何とも涼しい味わいになる。お好みでミョウガのみじん切りをパラパラとふりかければ、香りの高い夏の逸品に。夏バテ気味で疲れた胃袋にも、さらりと入るやさしい味だ。
 真夏の炎天下、大阪泉南市にあるビーチで、1日じゅうビーチバレーを観戦したある日、何気なく入った居酒屋でこのみそ汁に出会った。火照った体にキンキンに冷やしたビールを流し込み、トマトのみそ汁をいただいた。気さくな居酒屋のおばあちゃんの笑顔は、昔の祖母のように暖かかった。

 「トマ玉」
 中華料理のニラ玉の応用編。ニラをトマトに変えるだけ。フワフワ卵と真っ赤なトマトのコントラストが楽しい、ポップなファーストチャイニーズだ。
 トマトは大きめにザクザクと切っておく。卵2、3個もよーく溶いておく。中華鍋にごま油を熱してトマトを入れる。ジャジャーッとすごい音がするけど、ひるまずに。パパッと塩・コショウを振ったら、すぐに皿にあけておこう。もう一度、今度はサラダ油を熱して卵を入れる。半熟状態になったところで、トマトを戻しオイスターソースをからめて出来上がり。中華鍋をよーく熱してさっと炒めるのが、コツ。サラダ油を思いっきりたっぷり使うと、卵のふわふわ感がアップします。

 「エスニック・トマトチャーハン」
 タイのサムイ島というリゾートにバカンスに出かけたとき、ホテルの朝食で食べたのがトマトチャーハン。さすが、死ぬほど暑い国。カラダがすっきりするような涼味のあるメニューがあるもんだ、と感心した料理です。
 中華鍋にごま油を熱し、みじん切りにしたニンニクを香りが立つまで炒める。そこへ、トマ玉同様にザク切りにしたトマトをジャジャーッと入れる。コショウだけさっと振ったら、皿に取り分けておく。中華鍋にサラダ油を熱し、卵を割り入れ、そこにご飯(残りもんでいいんです。冷凍しておいたもんでもいいです。その際は解凍しておきましょうね)を入れる。あらかたご飯が炒まったら、トマトを戻して鍋肌からタラーリとショウユを回しかけ、最後にナンプラーをひと振り。これで出来上がり。器に盛ってから、好みでレモン汁や香菜を添えれば、さらにエスニック。ナンプラーは結構塩辛いので、塩、ショウユは控えめにするのがポイントだ。
 いずれもパパッと作れるイージークッキング。トマトのうま味をたんと召し上がれ。




宮崎恵理
ライター





「トマトのみそ汁」
(4人分)
材料:
トマト大1個
だし汁3カップ
合わせ味噌大2
ミョウガ適宜

1)トマトは熱湯にくぐらせ湯むきし、細かく刻んでおく。
2)だし汁を静かに沸騰させ合わせ味噌を溶き入れて火を止める。
3)お椀に刻んだトマトを入れ、2を注ぐ。好みでミョウガのみじん切りを散らす。

「トマ玉」
(4人分)
材料:
トマト中2個
卵3、4個
ごま油大1
サラダ油大2
オイスターソース大2
塩・コショウ

1)ヘタを取ったトマトをザク切りにしておく。卵は溶いておく。
2)中華鍋を熱し、ごま油を入れザク切りにしたトマトを入れ、すぐ塩・コショウを振って皿に取り分けておく。
3)中華鍋を再度熱してサラダ油を入れる。4)溶き卵を入れ半熟状態になったら2を加える。
5)オイスターソースをからめて出来上がり。

「エスニック・トマトチャーハン」
(2人分)
材料:
トマト大1個
ニンニク1片
残りご飯2杯分
ごま油大1
サラダ油大1
卵1個
ショウユ大1
ナンプラー大1
レモン汁大1
塩・コショウ、香菜適宜

1)ニンニクはみじん切り、トマトはザク切りにしておく。
2)中華鍋にごま油を熱し、ニンニクを香りが立つまで炒める。
3)2にトマトを加え、コショウ(好みで塩も)を振り、すぐに皿に取り分けておく。
4)中華鍋にサラダ油を熱し、卵を割り入れ、ご飯を加える。
5)4に3を加え、鍋肌からショウユを回しかけ、ナンプラーを加えて出来上がり。
6)器に盛ってから好みでレモン汁、香菜を。






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